資金繰り管理と運転資金

支払の時期と回収の時期にタイムラグがある場合に資金繰りを上手に回していくには、運転資金を正確に把握しておく必要があります。

今回は、運転資金の種類について解説します。

運転資金の種類

運転資金には「経常運転資金」「増加運転資金」「季節性運転資金」「赤字補てん資金」があります。

経常運転資金

経常運転資金とは、企業が事業を継続していく上で必要になる資金のことです。

例えば、仕入・売上を掛取引(後払い)で行う建設業・製造業・卸売業・小売業などの事業では、通常は支払が先で回収が後になります。そのため、売上の回収があるまでの間に支払で必要になる資金を確保する必要があります。

経常運転資金は、売上債権(売掛金+受取手形)に棚卸資産(在庫)を足して、買入債務(買掛金+支払手形)を差し引くことで計算できます。

経常運転資金=売上債権+棚卸資産-買入債務

資金繰りを管理するときは、人件費や賃料などの経費も考慮して全体の運転資金を把握します。

増加運転資金

増加運転資金とは、売上が増加した場合に追加で必要になる資金のことです。

売上が増加すると仕入代金の支払が増加します。そのため、売上の回収があるまでの間に増加した支払で必要になる資金を確保しておく必要が生じます。

せっかく売上が増えたのに仕入代金の支払ができないために「黒字倒産」してしまうという事態を防ぐためにも、回収よりも先に来る支払を把握しておく必要があります。

売上が増えればそれに伴い人件費や外注費などの経費も増えるという場合には、その点も考慮して全体の運転資金を把握します。

季節性運転資金

季節運転資金とは、季節的な原因で発生する資金のことです。

季節運転資金には、閑散期がある事業で売上が年間を通して大きく減少する時期に必要になる資金や、従業員に賞与を支払うための賞与資金、税金を納付するための納税資金、法人であれば決算時の配当金や役員賞与などを支払うための決算資金があります。

回収が減る時期や支払が増える時期と、そのボリュームについて前もって把握しておく必要があります。

赤字補てん資金

赤字補てん資金とは、売上の減少や不良在庫の増加、取引先の倒産などの原因により生じた赤字を補てんするために必要な資金のことです。

減少後の売上よりも仕入代金や経費の支払が多い場合があります。売上の回収だけでは残っている支払ができない場合には、足りない資金を確保(赤字を補てん)しておく必要が生じます。

また、取引先の倒産により売上の回収が不能になり、仕入代金や経費の支払が困難な場合には足りない資金を確保(赤字を補てん)する必要があります。

売上が減ったり不良在庫が増えたり取引先が倒産したとしても人件費や賃料などの支払はありますので、それらの経費も含めて足りなくなる運転資金を把握しておく必要があります。

まとめ

☛ 資金繰り管理は運転資金の把握から

運転資金を正確に把握して資金繰りを管理しておかないと、売上は上がっているのに現金が手元に無いという事態が起こり得ます。「運転資金は何となくこれくらい」という程度で構えていると、資金が足りなくなる直前まで気が付かないこともあります。

資金繰りを回していく上で、運転資金を把握することは非常に重要です。事前に資金が足りなくなる時期が分かっていれば対策をとるための時間も生まれます。資金繰り管理は必ず行うようにしたいですね。

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