株式会社・合同会社を設立する手順

今回は、これから開業する方・個人事業を法人にする方が株式会社・合同会社を設立するときの手順と注意点について解説します。

❶ 会社の基本的な事項を決める

(1)会社名(商号)を決める

注意点① 同じ商号を同じ本店所在地で登記できない

会社を設立するときは、ほかの会社がすでに登記した商号と同じ商号を、同じ本店所在地で登記することができません。

同一商号、同一本店の禁止

商号の登記は、その商号が他人の既に登記した商号と同一であり、かつ、その営業所(会社にあつては、本店。以下この条において同じ。)の所在場所が当該他人の商号の登記に係る営業所の所在場所と同一であるときは、することができない。

商業登記法第27条「同一の所在場所における同一の商号の登記の禁止」

会社名(商号)と本店所在地がカブるケースは相当レアかもしれませんが、不正の目的をもってほかの会社の商号を使用すると、使用停止や損害賠償を請求される可能性があります。

会社法第8条

1.何人も、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない。
2.前項の規定に違反する名称又は商号の使用によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある会社は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

注意点② 「株式会社」「合同会社」を使用する

株式会社を設立するなら「◯◯株式会社」「株式会社◯◯」という具合で商号に「株式会社」という文字を使用します。

合同会社を設立するなら「◯◯合同会社」「合同会社◯◯」という具合で商号に「合同会社」という文字を使用します。

ちなみに、株式会社を設立するのに「合同会社」という文字は使用できません。その逆も同様に、合同会社を設立するのに「株式会社」という文字は使用できません。

注意点③ 使用できる文字や符号には制限がある

会社の商号に使用できる文字や符号は以下のとおりです。

会社の商号に使用できる文字や符号

・漢字、ひらがな、カタカナ

・ローマ字(大文字、小文字)

・アラビヤ数字(1、2、3・・・)

・「&」(アンパサンド)

 「’ 」(アポストロフィー)

 「,」(コンマ)

 「-」(ハイフン)

 「.」(ピリオド)

 「・」(中点)

注意点④ 使用できない文字がある

会社の商号に使用できない文字は以下のとおりです。

会社の商号に使用できない文字

・ギリシャ文字、ハングル文字など

・会社の一部門を表すような文字

  例:「○○支店」「○○支社」など

・法律で使用が禁止されている文字

  例:銀行ではないのに「◯◯銀行」など

・公序良俗に反する文字

(2)事業目的を決める

事業目的は後ほど登場する定款(ていかん)に記載する必要があります。定款は会社の基本的なルールを定めるものです。事業目的の最後には「前(各)号に附帯関連する一切の事業」と記載しましょう。

目的の記載例

(目 的)
第○条 当会社は、次の事業を営むことを目的とする。
 ⑴ ◯◯◯◯
 ⑵ △△△△
 ⑶ □□□□
 ⑷ 前各号に附帯関連する一切の事業 

定款で定めた事業目的は登記簿謄本に記載されます。法律上認められていない事業内容が書かれていたり内容が抽象的だと、登記できない可能性があります。

注意点① 許認可が必要な業種の場合

建設業・運送業・産廃業・介護保険事業など、営業を開始するために許認可や届出、登録などが必要な業種があります。

これらの業種の場合、定款に事業目的を記載して登記されていないと必要な許認可等を取得することができないケースがあります。

☛☛☛「建設業の事業目的」について詳しくはこちら

☛☛☛「運送業・利用運送・倉庫業の事業目的」について詳しくはこちら

☛☛☛「産廃業・古物商の事業目的」について詳しくはこちら

☛☛☛「介護保険事業の事業目的」について詳しくはこちら

そのため、事業に必要な許認可等も意識して事業目的を決める必要があります。

注意点② 金融機関から融資を受ける場合

金融機関から融資を受けることを考えた場合には注意すべき点が2つあります。

1つは、定款の目的に記載されていない事業に金融機関が融資をしない可能性がある点です。

もう1つは、金融機関が融資できない業種がある点です。金融・保険業(保険の媒介や代理などは除きます)や風営法に関連する事業の一部などは信用保証協会の保証対象外業種ですので注意してください。

☛☛☛「信用保証協会」について詳しくはこちら

☛☛☛「信用保証協会の保証対象外業種」について詳しくはこちら

また、事業目的をあまり書き過ぎないように注意が必要です。

すぐにおこなう予定の事業だけではなく将来的におこなう可能性がある事業を含めて事業目的を決めることができますが、あまりにたくさんの事業目的が書いてあると、金融機関から「結局のところ何屋さん?」と疑念を持たれて融資の審査に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3)本店所在地を決める

本店所在地は自宅でも実家やオフィスの一室などでも問題ありませんが、賃貸物件の場合は契約書に「事務所等として使用しないこと」「住居専用」といった文言が記載されている場合がありますので注意してください。

※会社設立後に本店所在地を移転することもできますが、登録免許税がかかります。移転前後で法務局の管轄が変わらない場合は3万円、管轄が変わる場合は移転前後の法務局にそれぞれ3万円で計6万円かかります。

(4)資本金の額を決める

注意点① 許認可が必要な業種の場合

許認可が必要な業種には最低資本金額が定められている場合があります。

例えば、一般建設業では500万円、第一種旅行業では3,000万円が必要です。

許認可が必要な業種で事業をおこなう場合には必要な資本金額も事前に確認しておきましょう。

注意点② 対外的な信用が必要な場合

株式会社・合同会社ともに資本金1円で会社を設立することは可能です。しかし、資本金1円では取引先や金融機関に対する対外的な信用は得られないかもしれません。

登記情報は誰もが閲覧することができます。会社設立の登記が完了すると本店所在地・役員・資本金の額などを新規の取引先から確認される可能性もあります。

特に金融機関は、資本金の額を含めた様々な財務指標を融資の判断材料に使います。

株式会社の場合は「出資割合」に注意

株式会社の場合は1株1議決権が原則ですから、何人かで集まって出資する場合や第三者の方に出資してもらう場合には注意が必要です。

株式会社では出資の割合に応じて会社の重要な意思決定がおこなわれるため、代表者の方は最低でも2分の1を超え、できれば3分の2以上の金額を出資すると良いでしょう。

※合同会社の場合は出資の額に関係なく1人1議決権が原則です。

☛☛☛「株式会社 vs 合同会社」について詳しくはこちら

(5)事業年度を決める

事業年度を決めるというのは、決算日をいつにするか決めることです。決算日をいつにするかは自由に決めることができますが、事業の繁忙期は避けることをおすすめします。

また、決算日をいつにするかによって設立初年度の期間が変わってますので注意してください。

例えば、8月1日に9月末日を決算日とする会社を設立すると、2ヵ月で最初の事業年度が終了してあっという間に税務申告が必要になり、事務処理が大変!ということも考えられます。

➋ 会社の実印を作る

会社の実印とは、法務局に届け出る「代表者印」です。銀行印・角印・住所印(横判など)も合わせて作っておくと良いでしょう。

➌ 定款を作る

定款に記載する内容は以下の3点です。

 ①絶対的記載事項

(絶対に書かなくてはいけないもの)

株式会社の絶対的記載事項

(1)目的

(2)商号

(3)本店の所在地

(4)設立に際して出資される財産の価額又はその最低額

(5)発起人の氏名又は名称及び住所

(6)発行可能株式総数

合同会社の絶対的記載事項

(1)目的

(2)商号

(3)本店の所在地

(4)社員の氏名又は名称及び住所

(5)社員全員が有限責任社員である旨

(6)社員の出資の目的及びその価額又は評価の標準

 ②相対的記載事項

(書いておくと効力が発生するもの)

 ③任意的記載事項

(書いても書かなくてもどっちでも良いもの)

特に、①の絶対的記載事項の記載がないと、次の❹定款認証が受けられませんので注意してください。

☛☛☛合同会社の設立・運営するために知っておきたいルールについてはこちら

❹ 定款の認証を受ける(合同会社は不要)

株式会社の設立では、公証人による定款の認証を受ける必要があります。本店所在地と同じ都道府県内の公証役場であればどこでも大丈夫です。

 日本公証人連合会HP「公証役場一覧」

定款認証で必要なもの(株式会社のみ)

・定款

・手数料 約5万2千円

・収入印紙 4万円分

 (電子定款の場合は不要)

・印鑑証明書(発起人全員分)

なお、合同会社の設立の場合に定款の認証は必要ありません。

❺ 出資金を払い込む

出資金を払い込むには、個人名義の通帳を用意して(この時点では設立する会社名義の預金口座はありません)出資金(出資者が複数の場合は全員分)を払い込んだら「資本金の払込証明書」を作ります。

❻ 登記申請する

会社設立の登記申請は本店所在地を管轄する法務局に対しておこないますが、設立する会社の登記申請を取扱っている法務局については確認が必要です。

 法務局HP「管轄のご案内」

特に地方の場合は登記の申請を本局のみで取り扱っていることが多く、申請先の法務局を間違えると希望していた日に会社の設立ができなくなる可能性があります。

登記申請に必要なもの

株式会社・合同会社に共通

・登記申請書

・登記用紙と同一の用紙

・定款

・資本金の払込証明書

・印鑑届書

株式会社

・取締役の印鑑証明書

・発起人決定書

 (取締役が複数人いる場合)

 (定款で電子公告のURLを定めていない場合)

 (定款で本店所在地を具体的な所在地番号まで定めていない場合)

※その他、ケースごとに別途書類が必要になる場合があります。

合同会社

・代表社員の印鑑証明書

・決定書

 (代表社員を互選で定めた場合)

 (定款で資本金の額を定めていない場合)

 (定款で本店所在地を具体的な所在地番号まで定めていない場合)

※その他、ケースごとに別途書類が必要になる場合があります。

会社設立に必要な登録免許税は株式会社は15万円、合同会社は6万円(又は資本金の1,000分の7のいずれか大きい方)です。

会社設立日は、登記申請をした日(郵送の場合は、書類が法務局に到着した日)です。法務局の閉庁日(土日祝日・年末年始)を会社設立日にすることはできませんのでご注意ください。

まとめ

定款に事業目的を書きすぎない

☛ 融資が必要な場合は資本金に注意

☛ 株式会社の出資割合に注意

今回は株式会社や合同会社を設立する手順についてザックリご紹介しました。会社の設立は、許認可や金融機関との取引を考慮に入れて設計していく必要があります。

また、会社設立後にやらなくてはいけない手続きについては下記のページをご覧ください。

☛☛☛「会社設立後の手続き」について詳しくはこちら