飲食店の開業と融資の流れ
飲食店を開業する際に「日本政策金融公庫の融資を利用したい」とお考えの方も多いことでしょう。
今回は、飲食店を開業する時に日本政策金融公庫から融資を受ける場合の流れと注意点について解説します。
飲食店開業までの全体の流れ
飲食店の開業と融資の流れの全体像を把握しておきましょう。
① 飲食店の開業資金の予算を組む
開業しようとしている飲食店の、出店場所や広さ、どの程度の内装工事が必要か、従業員を何人雇うかなどによって、開業にかかる費用は異なります。全部で資金はいくらあれば飲食店をスタートすることができるか、開業費用に充てる自己資金はいくらか、足りない分の融資はどのくらいの金額を受けられれば良いか、全体の予算を組んでみましょう。
また、飲食店の開業には保健所の許可が必要ですが「食品衛生責任者」の資格が必須です。30人以上を収容できる比較的大きなお店を開業するときは「防火管理者」を選定して営業開始までに所轄の消防署に届け出る必要もあります。どちらも講習を受ければ取得できる資格ですので、早めに準備しておきましょう。
② 物件を探して情報を集める
飲食店は1に立地・2に立地と言われるほど立地が開業後の売上を左右します。もちろん開業する飲食店のコンセプト次第では、隠れ家的な場所や多少交通の便が悪い場所でも成功されているケースもあります。
まずは物件情報を集めましょう。「これだ!」という物件に出会えたら内見して現地とその周辺を確認します。そして、不動産屋さんに物件情報と平面図、初期費用として敷金や礼金・保証金などがいくらになるか見積書を用意してもらいます。「日本政策金融公庫で融資を受けられなければ開業は見送る」という場合は、この時点で正式契約をしたり手付金を支払うのは控えた方が良いです。不動産屋さんや大家さんに「融資が決まり次第、正式に契約しますから」とお願いすれば物件を流さずに待ってくれるケースもあります。
物件の取得と合わせて内装工事が必要であれば工事業者さんに内装工事の見積書を用意してもらいます。不動産屋さんに業者を紹介してもらえないか聞いてみるのも良いかもしれません。時間に余裕があれば、工事業者を何軒か当たり複数の見積りを比較するのも良いでしょう。
③ 厨房機器などの設備資金の情報を集める
物件が決まれば、作業台や冷凍冷蔵庫・製氷機などの厨房機器のサイズも決められるのではないかと思います。開業する自分のお店に必要な厨房機器などの設備資金の見積書を集めます。
見積りを出す業者さんによっては、後から配送料や搬入設置料などの費用を請求するケースもあるようです。設備資金の見積書は、設備自体の金額だけではなく配送料や搬入設置料を含めた金額を出してもらうように注意してください。
④ 日本政策金融公庫に融資を申込む
これから飲食店を開業する場合に日本政策金融公庫に融資を申込む場合には、以下の書類を用意する必要があります。
開業資金の融資申込に必要な書類
・借入申込書
・創業計画書
創業計画書は融資を申込む前に作成しておく必要があります。せっかく良い物件が見つかったのに創業計画書の作成に時間が掛かり、モタモタしている間に他の人に物件が渡ってしまっては最悪です。物件を探す前から創業計画書の作成をスタートさせて、物件を探しながら創業計画書をブラッシュアップしていくのがベストです。
また、個人事業主として融資を申込む場合は特に心配はありませんが、会社を設立して開業する場合には登記が完了してから融資を申込みます。物件の所在地で登記したいのに契約前で登記ができないという場合には、一旦は自宅などで登記をして日本政策金融公庫に融資を申込み、入金後に物件の本契約をした後、本店所在地を自宅などから物件の所在地に移転するという方法もあります。
⑤ 日本政策金融公庫の面談を受ける
日本政策金融公庫に融資を申込むと、次に待っているのは融資の担当者との面談です。面談の際には様々な資料の提出が必要になりますので事前に準備しておきましょう。
日本政策金融公庫の面談で必要な書類
・給与明細書、源泉徴収票や確定申告書
・開業するお店の物件情報、平面図、見積書
・設備資金(厨房機器など)の見積書
・食品衛生責任者の資格を証明する資料
・自己資金の準備経過が確認できる資料
・住宅・車のローン、カードローンなどの支払明細表
・公共料金の支払状況が確認できる資料
・顔写真付きの身分証明書(運転免許証など)
【自宅が賃貸の場合】
・不動産賃貸借契約書
・賃料の支払状況が確認できる資料
【自宅が持家の場合】
・固定資産課税明細書と領収書
※その他にも資料の提出が必要になる場合があります。
⑥ 物件の契約・内装工事開始
融資審査の結果、無事に融資を受けることができたら、物件の正式契約、内装工事、設備の搬入などの段取りを進めます。
飲食店は保健所の許可を受けられないと営業を開始することができませんので、内装工事をする際には事前に保健所に相談しておくと良いでしょう。
また、開業する飲食店が居酒屋やバーなどの主にお酒を提供するお店で、夜0時以降の深夜にも営業する場合には警察署への届出が必要になります。保健所の許可を受けた上で「深夜酒類提供飲食店営業営業開始届出」を所轄の警察署に届け出ます。この届出は警察に提出するものなので保健所とはまた違ったルールを守る必要が出てくるため、こちらも事前に所轄の警察署の生活安全課に相談しておくと良いでしょう。
⑦ 保健所の許可取得・営業開始
保健所に営業許可の申請書類を提出する際、現地調査の日程を調整します。現地調査では、保健所の職員が実際にお店を見て設備が許可の要件に適合しているかチェックします。現地調査の結果、問題が無ければその時点から「すぐに営業を開始しても良い」という保健所もあれば、現地調査をして問題がなかったとしても「営業は1週間後から」という保健所もあります。この点は保健所によって取り扱いが異なるため、事前にお店を管轄する保健所に確認しておくと良いでしょう。
また、夜0時以降も主にお酒を提供するお店を営業する場合は、前述の通り、警察署に届出が必要になります。「深夜酒類提供飲食店」の営業を開始しようとする10日前に届け出ます。
飲食店開業の注意点
注意点① 必要な資格を取得しているか注意
前述の通り、飲食店の開業には「食品衛生責任者」の資格が必要です。また、一定規模以上のお店であれば「防火管理者」も置かなくてはいけません。
必要な資格を取得していないと保健所の許可を受けられないのはもちろんですが、融資の審査も進みませんので、その分オープンの時期も遅れることになります。
注意点② 物件の用途地域に注意
飲食店の物件選びでは飲食店の営業ができない地域もありますので、用途地域に注意する必要があります。また、開業する飲食店が居酒屋やバーなどの主にお酒を提供するお店で、夜0時以降の深夜も営業する場合にも注意が必要です。
契約後や内装工事完了後に「飲食店の許可が受けられない」「夜0時以降の営業ができない」という事態にならないように、用途地域は物件を探す段階で必ず確認するようにしましょう。
用途地域ごとの飲食店営業の可否
夜0時以降も主にお酒を提供するお店を営業できる地域
注意点③ お店が許認可等の要件を満たしているか注意
飲食店を開業するには「食品衛生責任者」の資格を取得しておくことはもちろんですが、他にもシンクや手洗い、給湯器など設備に関する要件があります。
また、夜0時以降も主にお酒を提供する「深夜酒類提供飲食店」の場合には、保健所の許可の要件に加えて客室の面積や設備などのルールがあります。
上記の用途地域の確認と同様に、工事完了後に「工事をやり直す」「追加工事が必要」という事態にならないように、内装工事や設備の内容は事前に保健所や警察署に確認するようにしましょう。
まとめ
☛ 必要な資格は早めに取得しておく
☛ 物件の用途地域には特に注意する
☛ 保健所や警察署に事前に相談する
いかがだったでしょうか。日本政策金融公庫から融資を受けて飲食店を開業するまでの流れを駆け足で解説しました。
飲食店を開業する時には、備品の購入やメニューの開発、仕入先の選定、従業員の求人・採用・教育、販売促進など他にもやることが沢山あります。資金調達や許可・届出に多くの時間を費やすのが難しい場合には、融資の専門家や行政書士の力を借りるのも良いでしょう。
行政書士門間拓也事務所では、日本政策金融公庫から開業資金の融資を受けたいとお考えの方の創業融資をサポートしています。ご相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。