日本政策金融公庫の農業向け融資

日本政策金融公庫には「農林水産事業」という部署があり、民間の金融機関では信用保証の対象外業種となっている農業・林業・漁業の経営者に対して長期の資金をメインに融資しています。

☛☛☛「信用保証対象外業種」について詳しくはこちら

スーパーL資金(農業経営基盤強化資金)や新規就農者向けの青年等就農資金などがあります。

今回は、日本政策金融公庫の農業向け融資について解説します。

新規就農者向けの「青年等就農資金」

青年等就農資金は、日本政策金融公庫が新規就農者に対して無利子で貸し付けを行う制度です。

日本政策金融公庫「青年等就農資金」

国は、新規就農者を増やし定着させるため、日本政策金融公庫に対して無利子化のための利子補給を行います。そのため、新規就農者は無利子で融資を受けることができます。

青年等就農資金を利用するための要件は以下の通りです。

青年等就農資金を利用するための要件

①認定新規就農者になること
 市町村から「青年等就農計画」の認定を受ける必要があります。認定を受けると「認定新規就農者」になることができます。

②就農要件
 認定新規就農者になれるのは、農業経営を開始してから5年以内です。

③年齢要件
 認定新規就農者になれるのは、原則18歳以上45歳未満の方ですが、知識や技能を有する方など一定の要件を満たせば45歳以上65歳未満の方でも特例で認定を受けることができます。
 法人が認定を受ける場合には役員の過半数の方が就農・年齢の要件を満たす必要があります。この場合は役員個人の農業経験年数までは問われません。

④経営改善資金計画を作成して提出すること

資金の使いみち

①施設・機械(設備資金)
 農業生産用の施設・機械のほか、農産物の処理加工施設や、販売施設も対象となります。

②果樹・家畜等(運転資金)
 家畜の購入費、果樹や茶などの新植・改植費のほか、それぞれの育成費も対象となります。

③借地料などの一括支払い(運転資金)
 農地の借地料や施設・機械のリース料などの一括支払いなどが対象となります。ただし、農地等の取得費用は対象となりません。

④その他の経営費
 経営開始に伴って必要となる資材費などが対象となります。

融資の条件

①返済期間
 12年以内(うち据置期間5年以内)
 ※今後「17年以内」まで延長予定。

②融資限度額
 3,700万円

③利率
 無利子(借入の全期間無利子です)

④担保・保証人
 実質無担保・無保証人
担保は原則として融資対象物件のみで、保証人は原則として個人の場合は不要です。法人の場合で必要な場合でも代表者のみです。

その他

①申込から融資実行までの期間
 公庫の融資審査に必要となる書類が整った時点から融資が実行されるまでに1か月半~2か月程度かかります。

②平均的な借入額
 営農類型によって借入額は異なりますが、平均借入額は700~800万円程度です。

借入期間の全期間が無利子であり据置期間が設けられること、実質無担保無保証人であることは大きなメリットです。

また、資金を借地料などの一括支払いにも使えるので、土地を持っていない非農家出身の新規就農者の方も経営基盤を確立していくチャンスがあります。

もちろん、借入には審査がありますが新規就農者が利用を検討しやすい融資制度です。

「認定新規就農者」になるには?

認定新規就農者になるためには、新たに農業を始める新規就農者が「青年等就農計画」を作成して市町村から認定を受ける必要があります。

農林水産省「青年等就農計画制度について」

青年等就農計画は、各市町村が定める「農業経営基盤強化の促進に関する基本構想」に合致しないと認定されません。各市町村ごとに「基本構想」には多少の違いはありますが、下記のような指標を掲げていることが多いです。

農業所得目標:年間250万円以上
労働時間目標:年間2,000時間以内

また、認定新規就農者になるために作成する青年等就農計画認定申請書以外にも資料の提出が必要な市町村もありますので、認定を受けようとしている市町村の「基本構想」や申請様式をご確認いただくか、当サイト管理者へお問い合わせください。

スーパーL資金とは?

認定新規就農者は原則更新ができないため、認定期限が到来した後は申請後5年間の「農業経営改善計画」を市町村に提出することで「認定農業者」に移行することができます。

認定農業者となり更なる経営発展を目指す際には、日本政策金融公庫のスーパーL資金(農業経営基盤強化資金)を利用できる可能性があります。

スーパーL資金には以下のような特徴があります。

スーパーL資金の特徴

①返済期間
 25年以内(うち据置期間10年以内)

②融資限度額
 個人:3億円
 法人:10億円

③資金使途
 農地等の取得にも使えます。個人が法人に参加するために必要な出資金等の支払いにも使えます。

認定農業者に年齢制限は無く、5年後の認定期限到来時に再申請ができます。認定農業者になるための農業経営改善計画も、各市町村が定める「農業経営基盤強化の促進に関する基本構想」に合致しないと認定されません。こちらも各市町村によって違いはありますが以下のような指標を掲げていることが多いです。

農業所得目標:年間450万円以上
労働時間目標:年間2,000時間以内

認定農業者になるための農業経営改善計画についても、青年等就農計画と同様に認定申請書以外の資料を提出する必要がある市町村もありますので、認定を受けようとしている市町村の「基本構想」や申請様式をご確認いただくか、当サイト管理者へお問い合わせください。

※今後、「複数市町村で農業を営む農業者の場合は、市町村に代わって都道府県又は国が農業経営改善計画の認定手続を一括で行う」方針。

まとめ

☛ 日本政策金融公庫には農業向けの融資がある

☛ 新規就農者は認定を受けて「青年等就農資金」

☛ 認定農業者は「スーパーL資金」

1985年には542万人だった日本の農業就業人口は、30年後の2015年には209万人まで減少しました。また、現在は農業関係者の6割を超える方が65歳以上であり、耕作放棄地の拡大が懸念されています。

そんな日本の農業が抱える課題の解決に積極的に取り組む方にとって、日本政策金融公庫の融資は資金面を含め重要なサポート機能を発揮してくれます。

行政書士門間拓也事務所では、日本政策金融公庫から融資を受けたいとお考えの方の融資をサポートしています。ご相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。