経営力向上計画の認定を受けるメリットとは?

「経営力向上計画」は、人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資など、自社の経営力を向上するために実施する計画で、認定された事業者は、税制措置金融支援法的支援を受けることができます。

今回は、経営力向上計画の認定を受けることによって得られるメリットについて解説します。

※本記事は、平成31年度税制改正に対応した中小企業庁「中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き」(令和元年12月3日版)に準拠しています。今後の税制改正により内容が変更になる場合がありますので、最新の情報をご確認いただくか、当ページの運営者にお問い合わせください。

【2020年6月16日追記】

※令和2年度税制改正対応版「中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き」(令和2年6月16日版)では、新型コロナウイルス感染症対応下における経営力向上計画の認定に関する柔軟な取扱いとして、設備取得後の申請等に関する特例が設けられています。

中小企業庁 経営サポート「経営強化法による支援」

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/

メリット① 税制措置

経営力向上計画の認定を受けた事業者は、認定計画に基づき取得した一定の設備に係る法人税等の特例(中小企業経営強化税制)、認定計画に基づき行った事業承継等に係る登録免許税・不動産取得税の特例を利用することができます。

 中小企業経営強化税制

法人税(個人事業主の場合には所得税)について、即時償却または取得価額の10%(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)の税額控除が選択適用できます。(中小企業経営強化税制)

具体的には、青色申告書を提出する⑴中小企業者等が、⑵指定期間内に、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき、⑶一定の設備を新規取得等して、⑷指定事業の用に供した場合、即時償却又は取得価額の10%(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)の税額控除を選択適用することができます。

⑴中小企業者等とは・・・

・資本金もしくは出資金の額が1億円以下の法人
・資本金もしくは出資金を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人
・常時使用する従業員数が1,000人以下の個人
・協同組合等

⑵指定期間とは・・・

平成29年4月1日から令和3年3月31日までの期間

⑶一定の設備とは・・・

(A)生産性向上設備(A類型)

生産性が旧モデル比年平均1%以上向上する設備

◆機械装置(160万円以上/10年以内※)
◆測定工具及び検査工具(30万円以上/5年以内※)
◆器具備品(30万円以上/6年以内※)
◆建物附属設備(60万円以上/14年以内※)
◆ソフトウエア(情報収集機能及び分析・指示機能を有するもの)(70万円以上/5年以内※)

※金額は、1台1基又は一の取得価額の最低価額/年数は、販売開始時期

(B)収益力強化設備(B類型)

投資収益率※が年平均5%以上の投資計画に係る設備

◆機械装置(160万円以上)
◆工具(30万円以上)
◆器具備品(30万円以上)
◆建物附属設備(60万円以上)
◆ソフトウエア(70万円以上)

※投資収益率は、「営業利益+減価償却費」の増加額/設備投資額で算出・金額は1台1基又は一の取得価額の最低価額

なお、上記のA類型・B類型に加えて、2020年5月1日からデジタル化設備(C類型)が追加されました。

☛☛☛「デジタル化設備(C類型)」について詳しくはこちらをご覧ください

⑷指定事業とは・・・

製造業、建設業、農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、採石業、砂利採取業、卸売業、小売業、一般旅客自動車運送業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業、料理店業その他の飲食店業、海洋運輸業及び沿海運輸業、内航船舶貸渡業、旅行業、こん包業、郵便業、損害保険代理業、情報通信業、駐車場業、学術研究、専門・技術サービス業、不動産業、物品賃貸業、広告業、宿泊業、洗濯・理容・美容・浴場業、その他の生活関連サービス業、医療、福祉業、社会保険・社会福祉・介護事業、教育、学習支援業、映画業、協同組合(他に分類されないもの)、他に分類されないサービス業(廃棄物処理業、自動車整備業、機械等修理業、職業紹介・労働者派遣業、その他の事業サービス業)

電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業、娯楽業(映画業を除く)、一部飲食店業等は対象になりません。

設備の取得時期について(中小企業経営強化税制A・B共通)

【原則】経営力向上計画の認定を受けてから設備を取得

経営力向上設備等については、以下のとおり、経営力向上計画の認定後に取得することが原則です。

中小企業庁:中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き(令和元年12月3日版)

【例外】設備取得後に経営力向上計画を申請する場合

設備を取得した後に経営力向上計画を申請する場合には、設備取得日から60日以内に経営力向上計画が受理される必要があります(計画変更により設備を追加する場合も同様)。
上記の場合において税制の適用を受けるためには、制度の適用を年度単位で見ることから、遅くとも当該設備を取得し事業の用に供した年度(各企業の事業年度)内に認定を受ける必要があります(当該事業年度を超えて認定を受けた場合、税制の適用を受けることはできませんのでご注意ください)。

中小企業庁:中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き(令和元年12月3日版)

【2020年6月16日追記】

【例外の例外】新型コロナウイルス感染症対応下における経営力向上計画の認定に関する柔軟な取扱い

令和2年2月以降に取得した設備に関しては、設備取得から経営力向上計画の申請(受理)までの期間が60日を超過する場合であっても、令和2年9月30日までの期間は申請が受理されます。

また、令和2年9月30日までの期間に申請された経営力向上計画については、特例措置として、設備を取得し事業の用に供した年度(各企業の事業年度)内に認定を受けたものと同様に取り扱われます。

中小企業庁:「中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き」(令和2年6月16日版)

国税庁

新型コロナウイルス感染症に関する対応等について

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kansensho/index.htm

 登録免許税・不動産取得税の特例

他者から事業を承継するために、土地・建物を取得する場合、登録免許税・不動産取得税の軽減措置を利用することが可能です。

具体的には、⑴中小企業者等が、⑵適用期間内に、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき、⑶合併、会社分割又は事業譲渡を通じて他の中小企業者等から不動産を含む事業用資産等を取得する場合、不動産の権利移転について生じる、⑷登録免許税、不動産取得税の軽減を受けることができます。

⑴中小企業者等とは・・・

・資本金もしくは出資金の額が1億円以下の法人
・資本金もしくは出資金を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人
・常時使用する従業員数が1,000人以下の個人
・協同組合等

⑵適用期間とは・・・

平成30年7月9日から令和2年3月31日までの期間

⑶対象となる行為類型は・・・

合併 、会社分割、事業譲渡 により、他の中小企業者等から土地・建物を含む事業上の権利義務を取得する行為であって、事業の承継を伴うもの

⑷軽減措置の内容は・・・

認定計画に基づき、合併、会社分割又は事業譲渡を行って、土地・建物を取得する場合には、以下のとおり、特例が適用されます。

中小企業庁:中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き(令和元年12月3日版)

メリット② 金融支援

経営力向上計画の認定を受けた事業者は、政策金融機関の低利融資民間金融機関の融資に対する通常とは別枠での信用保証債務保証等の資金調達に関する支援などを受けることができます。

①日本政策金融公庫による低利融資

経営力向上計画の認定を受けた事業者が行う設備投資に必要な資金について、低利融資を受ける事ができます。

②中小企業信用保険法の特例

経営力向上計画の実行※にあたり、民間金融機関から融資を受ける際に、信用保証協会による信用保証のうち、普通保険等とは別枠での追加保証や保証枠の拡大が受けられます。

※新商品・新サービスなど「自社にとって新しい取組」(新事業活動)に限ります。

③中小企業投資育成株式会社法の特例

経営力向上計画の認定を受けた場合、通常の投資対象(資本金3億円以下の株式会
社)に加えて、資本金額が3億円を超える株式会社(中小企業者)も中小企業投資育成株式会社からの投資を受けることが可能になります。

④日本政策金融公庫によるスタンドバイ・クレジット

経営力向上計画の認定を受けた中小企業者(国内親会社)の海外支店又は海外子会社が、日本公庫の提携する海外金融機関から現地通貨建ての融資を受ける場合に、日本公庫による債務の保証を受けることができます。

補償限度額:1法人あたり最大4億5,000万円
融資期間:1~5年

⑤中小企業基盤整備機構による債務保証

資本金10億円以下または従業員数2,000人以下の中堅企業等※が、経営力向上計画を実施するために必要な資金について、保証額最大25億円(保証割合50%、最大50億円の借入に対応)の債務の保証を受けられます。

※中小企業者は含まれません。

⑥食品等流通合理化促進機構による債務保証

食品製造業者等は、経営力向上計画の実行にあたり、民間金融機関から融資を受ける際に信用保証を使えない場合や巨額の資金調達が必要となる場合に、食品流通構造改善促進機構による債務の保証を受けられます。

適用対象者

中小企業庁:中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き(令和元年12月3日版)

金融支援の活用を検討している場合は、経営力向上計画を提出する前に、関係機関に相談する必要があります。

中小企業庁:中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き(令和元年12月3日版)

また、金融機関及び信用保証協会の融資・保証の審査は、担当省庁による経営力向上計画の認定審査とは別に行われます。認定を取得しても融資・保証を受けられない場合があります。

メリット③ 法的支援

経営力向上計画が認定された事業者は、業法上の許認可の承継の特例組合の発起人数に関する特例事業譲渡の際の免責的債務引受に関する特例措置を受けることができます。

なお、事業承継等として事業譲渡を行う場合には、承継される側の中小企業者が株式会社でなければ適用対象となりませんので、ご注意ください。

中小企業庁:中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き(令和元年12月3日版)

 許認可承継の特例

事業承継等を行うことを記載内容に含む経営力向上計画の認定を受けた上で、その内容に従い、以下のいずれかの許認可事業を承継する場合には、承継される側の事業者から、当該許認可に係る地位をそのまま引き継ぐことができます。

・旅館業(旅館業法第3条第1項)

・建設業(建設業法第3条第1項)

・火薬類製造業・火薬類販売業(火薬類取締法第3条・第5条)

・一般旅客自動車運送事業(道路運送法第4条第1項)

・一般貨物自動車運送事業(貨物自動車運送事業法第3条)

・一般ガス導管事業(ガス事業法第35条)

※()内は根拠規定

 組合発起人数の特例

組合の組成を記載内容に含む経営力向上計画の認定を受けた上で、その内容に従い、事業協同組合、企業組合又は協業組合を設立する場合には、通常、最低4人必要とされている発起人の人数が、3人でも可となります。

 事業譲渡の際の免責的債務引受けの特例

通常、企業が事業譲渡により債務を移転するには、債権者から個別に同意を得る必要があり、この同意がない場合には、事業譲渡をした企業は債務を免れないこととなります。

事業譲渡を行って他者から取得する経営資源を活用する取組みについて計画認定を受けた場合、企業が債権者に対して通知(催告)し、1ヵ月以内に返事がなければ債権者の同意があったものとみなすことができ、より簡略な手続きにより債務を移転することができます。

その他メリット

経営力向上計画の認定を受けた事業者は、令和元年度補正予算の持続化補助金の採択審査で加点対象になります。

☛☛☛令和元年度補正予算「持続化補助金」について詳しくはこちらもご覧ください

「経営力向上計画加点」

各受付締切回の基準日までに、中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上計画」の認定を受けている事業者は、採択審査時に、政策的観点から加点(=経営力向上計画加点)されます。

「経営力向上計画加点」における、各受付締切回の基準日(認定日の期限)は以下のとおりです。

第1回(2020年3月31日受付締切分)

  基準日:2019年12月31日

第2回(2020年6月5日受付締切分)

  基準日:2020年3月31日

第3回(2020年10月2日受付締切分)

  基準日:2020年3月31日

第4回(2021年2月5日受付締切分)

  基準日:2020年12月31日

行政書士門間拓也事務所では、経営力向上計画の認定申請をサポートしています。ご相談は無料ですので、ご不明な点やお困りのことがございましたら、お気軽にお問い合わせください。